ジオラマを作るみたいに並べた、思い出を。
どう頑張ったって不格好なそれは立体にはならなくて、歪な形で、ただ惨めになるだけだった。淡い思い出一つ一つはとてもキレイなのに、私はそれを上手く繋げられない。


恋愛禁止、なんてバカみたい。自嘲気味に笑った。私のそういうところがダメで、あの子とは違うんだということを思い知らされる。幼馴染なんて肩書き、バカみたい。溢れそうになる涙をぐっと飲み込むと、鼻の奥がつんと痛くなった。
音也はどう見たってあの子のことが好きで、あの子はどう見たって、音也のことが好きで。天地がひっくりかえったって彼は私のことを女の子として見てはくれない。
私が何年もかけて積み上げた思い出を全否定されたような気持ちになった。いつまでも友達。一生幼馴染。なんて残酷な言葉。



「…ここにいたのか。」



珍しく、肩で息をした真斗はしゃがみこむ私を見下ろした。
心配してくれてありがとうとか、大丈夫だよとか、言わなきゃいけないことは沢山あるはずなのに、口をついて出る言葉は恨み言ばかりだ。あの子のことが嫌いなんじゃなくて、ただ私は音也のことが好きなだけなのに。



「 音也が、」

「……」

「春歌ちゃんとペア組むって、」

「…ああ、」



彼がキラキラしていて、とても悲しい顔なんてできなかった。淡い思い出が塗り潰される。「おめでとう。」と取り繕った顔と声は、我ながらよくできていたと思う。アイドル科コースにも入れる演技力だと自分を褒めてあげたい。




『ペア、決まったんだ。』



誰と?なんて聞きたくもなかった、聞くまでもなかった。
音也がキラキラした顔で追いかけていた彼女は可愛くて素直で、


私じゃない子。


聞きたくなかった。知りたくなかった。
純粋で、優しくて、明るくて。努力家で。アイドルになるために生まれてきたみたいな人。私はいつだって、音也の1番のファンだったんだよ。


「…今日は、冷えるな。」


ばさり、と頭に被せられたブレザーは真斗の体温が残っていて、泣いてしまうくらいに暖かかった。涙が溢れる。でも真斗のブレザーのおかげでそれは見えなくて、何も見なくていいように私は静かに目を閉じる。





かなしくなんかないさ

(暖かいから泣いてしまった、なんて言い訳。)









20111111